[おい森情報掲示板] FE小説〜ライアンの眠れない夜〜

FE小説〜ライアンの眠れない夜〜
日時: 2008/11/01 20:34
名前: さすらいの物書き (ID: GL72A68Z)

(…………ねむれない)
 天幕に入る前通りかかったオグマに早めに寝ろよと云われたのが逆に気になって、ライアンは、まだ寝つけない。
 いや、気になることは他にもあった。
「……」
(でも……)
(――どうして彼女はいつも楽しそうなんだろう)
「……ん」
 ライアンは、同じ天幕で寝息を立てる兄たちを起こさぬようそっと毛布から出ると、肌寒い空気の満ちた夜の森へ出た。

 この旅は、少年にとって決して楽しめるようなものではなかった。
 アリティアの王太子マルスを将とするグルニア遠征軍。その軍を構成するのは聖騎士アランや傭兵オグマのような歴戦の強者ばかりではない。自分のような初陣を果たしたばかりの若輩者が、かなりの数、いる。
 オグマ、そして謎の仮面の騎士シリウスとともに軍に加わったユベロやユミナも自分と変わらぬ年若き少年少女であるし、今あとにした天幕に眠るルークやロディも、経験が少ないためか同世代のマルスやゴードンに比べると年相応に頼りなく見える。
(でも、それがこの軍の主力だし、ぼくも、その主力の一人なんだ……)
 胸苦しくなる重圧感。森の木々の枝葉が、昼間とは違い不気味に風に揺れている。

「――あら、ライアン。あなたも寝つけないの?」
 少女の声が聞こえ、ライアンはびくりとして振りかえる。
 そこには寝間着の上からケープを纏った、黄金色の髪のユミナがいた。


4/1   END

Page:1



Re: FE小説〜ライアンの眠れない夜〜 ( No.1 )
日時: 2008/11/01 20:36
名前: さすらいの物書き (ID: GL72A68Z)

「あ、う、うん。ちょっとね……。ユベロは一緒じゃないの?」
「ユベロならぐっすり眠ってるわ。案外神経図太いみたいよ、あの子。あたしは見た目どおり繊細なものだから、ちょっとしたことでも気になってね」
 ユミナが暗がりの中で肩をすくめる。
「なにが、気になるの?」
「お風呂がないこと」
「え? あ、そうだね……」
「こんな場所じゃ水も好きには使えないでしょ。全身洗うのは無理でも、せめて髪の毛ぐらいは洗いたいわ。今は手足と顔くらいしか洗ってないんですもの。あたし、自分がこんな匂いだなんて、初めて知ったわ」
 そういってユミナは髪の毛をかき上げる。ライアンは遠慮のないユミナの物云いに、なぜか赤面してしまった。夜だから、相手には気づかれないだろうけど。
「そ、それで、寝れなくて、散歩してるの?」
「そう。あなたも付き合う?」
「あ、うん。いいけど……」 
「う〜ん、けど、あまり野営から離れないようにしないとダメよねぇ。――ん?」
 ユミナが、何かに気づいたような顔になった。
「どうしたの、ユミナ」
「煙の匂いがする……もしかして……」
「――火事!?」
 ライアンは辺りを見まわす。火の明かりは見えない。その場からすこし動いて、明かりを捜す。すると。
 

Re: FE小説〜ライアンの眠れない夜〜 ( No.2 )
日時: 2008/11/01 20:39
名前: さすらいの物書き (ID: GL72A68Z)


 木々の間から、炎がちらりと見えた。
「ユミナ、あっち!」
 ライアンは叫んで、かけだした。ユミナがそれにつづく。
 炎が燃えている場所はすぐ近くだった。そこには――
「――え?」

 そこには、少女ェいた。
 炎があたりを琥珀色にゆらめかす中、すみれ色の髪とその衣服は炎に照らされてオレンジ色に映え――
 ライアンは、目を奪われた。
(…………)
 焚き火をしていたらしいその炎にかけられた鍋をのぞき込みながら鼻歌をうたっている少女――マリーシアは、こちらには気づかずに鍋の様子を見ている。
「……あっきれた。こんな夜中に何やってるのマリーシア」
 あとから追いついたユミナが、マリーシアに声をかける。マリーシアはやっと二人に気づき、こちらを向いた。
「――あっ、ユミナにライアン。どうしたの?」
「どうしたのじゃないわよ! あなた一人なの? マリーシア」
「ううん。ドーガさんとカシムさんが今晩の見張りをやってて、そこにおじゃましてたの。ドーガさんなら……」

Re: FE小説〜ライアンの眠れない夜〜 ( No.3 )
日時: 2011/12/10 07:59
名前: 古スレ上げ君 (ID: k9gW7qbg)

 木々の間から、炎がちらりと見えた。
「ユミナ、あっち!」
 ライアンは叫んで、かけだした。ユミナがそれにつづく。
 炎が燃えている場所はすぐ近くだった。そこには――
「――え?」

 そこには、少女ェいた。
 炎があたりを琥珀色にゆらめかす中、すみれ色の髪とその衣服は炎に照らされてオレンジ色に映え――
 ライアンは、目を奪われた。
(…………)
 焚き火をしていたらしいその炎にかけられた鍋をのぞき込みながら鼻歌をうたっている少女――マリーシアは、こちらには気づかずに鍋の様子を見ている。
「……あっきれた。こんな夜中に何やってるのマリーシア」
 あとから追いついたユミナが、マリーシアに声をかける。マリーシアはやっと二人に気づき、こちらを向いた。
「――あっ、ユミナにライアン。どうしたの?」
「どうしたのじゃないわよ! あなた一人なの? マリーシア」
「ううん。ドーガさんとカシムさんが今晩の見張りをやってて、そこにおじゃましてたの。ドーガさんなら……」

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