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　一つしかない脳内で複数の選択肢がぶつかり合っていた。俺はどうにかそれを一つに束ねて一個の正しい考えに変換しようとしていたが、考えがまとまらないとはこのことを言うのだろうか。結論が出ない。そもそも、ぶつかり合う選択肢自体が間違っているのだろうか。あるいは、どうまとめたとしても正解は生じないのか。その考えに一々感情を混ぜ込むことにより、結論を出すことを恐れている自分さえ疑える。
　今回ばかりは自己中位の考えが丁度いいのか。あくまで俺は「俺」であり続けるべきなのか。何も言わず消えるべきなのだろうか。
　俺の性質は『自分よりも他人を優先する』という代物だったはずだ。それは変わらない。変わらないはずなのだが今回ばかりは、どうしても「自分」を優先してしまいたくなる。それは俺がどれだけ真剣なのかが伺える。普通にごく一般的に考えるとそれは俺にとって、とてつもなく悔しく悲しいことなのだ。そう思うのは間違ってない。寧ろ人間らしい普通の感情だ。だが、俺はそれをどうにか抑え込み、飲み込み尚且つ『自分などどうでも良くて“相手が”ハッピーエンドで終わればいい』と思っている……。　いや、こんなのは嘘だ。どうしようもない嘘だ。本当はそんな他人行儀なことを思っているわけじゃない。物わかりの良いことを言いたいわけじゃない。俺は、崩壊してしまう事を恐れているのだ。とてつもなく怖い。嫌だ、こんな終わり方なんて一番御免だった。分かってる。俺自身が最も嫌う自己中心的な発言なのは分かってる。でも、こんな時まで俺は「御人好し」を演じ続けなければならないのだろうか。少し位「俺」が最優先じゃダメなのだろうか。どうしても諦められない。こんなに一途になったのは初めてだから。こんなに感情任せな思考を持ったのは初めてだったから。だから俺は今、こんなに悶え苦しんでいるのだ。
　でも、邪魔をするなんてことは絶対できない。それこそ、本当の意味での「崩壊」を招いてしまいかねないからだ。結局、優しい人というのは、それだけであって可もなく不可もなく無難な道を歩く運命にあるのだろう。だから、優しい人というのはやってられないんだ。

　でも、俺は未だ優しい人間を演じ続ける。